nanoVNAでモービルアンテナのSWRを測定する

アンテナのSWR(定在波比)をnanoVNAで測定してメーカー公称のVSWRと比較してみます。nanoVNAはとても小型で安価なアンテナアナライザとして利用可能です。本来はネットワークアナライザですが、今回は第一電波工業株式会社の144/430MHz帯2バンドモービルアンテナSG7900のSWRの測定のみを行います。

 

nanoVNAは若干見た目などが異なるものがいくつか販売されており、価格も少しばらつきがあります。仕様は大きく異ならないと思うので、その中でも比較的安価なものを選びました。

 

SG7900はモービルアンテナとして優れた製品です。実際に交信で使っていますが良好です。あまり大きなアンテナなどが設置できないので固定運用でも手軽に使える便利な製品として重宝しています。

 

SG7900の規格は

・利得/5.0dB(144MHz)、7.6dB(430MHz)

インピーダンス/50Ω

・VSWR/1.5以下

・全長/1.58m

・型式/7/8λダブルC-Loadノンラジアルホイップ(144MHz),
   5/8λ3段C-Loadノンラジアルホイップ(430MHz)

となっています。モービルホイップとしては比較的高利得です。

アンテナ基台は第一電波工業株式会社 MR5Aを使用します。

 

SWR(定在波比)には電圧定在波比と電流定在波比がありますが、一般に定在波比と言った場合は電圧定在波比(VSWR)を指します。

SWR(VSWR)は線路(同軸ケーブルなど)に生じる定在波の腹の電圧Vmaxと節の電圧Vminの比で

VSWR = Vmax/Vmin

1≦VSWR

です。

アンテナの給電点インピーダンスと線路の特性インピーダンスが等しいときにSWRは最小値1をとります。SWRは低いほうが電力の反射がなく効率よくアンテナから電波としてエネルギーが送出されることになります。送信機、線路、アンテナのインピーダンスの整合を取ることが重要で、SWRはその整合の程度の指標となります。特性インピーダンスが50Ωの同軸ケーブルの場合、アンテナの給電点インピーダンスが50Ωであればよいことになります。インピーダンスは抵抗成分とリアクタンス成分からなるベクトル量で、アンテナの給電点インピーダンスはリアクタンス分を0とし純抵抗50Ωとするのが理想です。SWRが1に近いほど理想的な特性で、大きくなると反射が大きくなり、最悪の場合には送信機の終段を焼損することもあります。

 

使用するnanoVNAのファームウェアのバージョンは0.8.0です。PCとの接続やファームウェアの更新などに関してはWeb上の情報などを参照してください。

 

測定の前にnanoVNAの較正を行います。

nanoVNAには較正用のダミーロードが付属しますが、50Ωのダミーロードは1つしか付属しません。50Ωのダミーロードは較正には厳格には2つ必要です。50Ωのダミーロードは安価に購入可能なので別途用意しておくとよいでしょう。

周波数レンジ144~146MHzと430~440MHzを設定してそれぞれ較正します。

 

較正したら接続します。アンテナ側のコネクタがM型接栓でnanoVNAはSMAなので、変換ケーブル1D1SRを使って接続します。

 

SG7900はアース不要のアンテナですが、念のためアンテナ基台MR5Aを接地します。テスターでアースとアンテナ下部の導通を確認します。きちんと導通しておりひとまず接地OKとします。

 

144~146MHzでのSWRの測定結果です。

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SWRが1.5以下であることが確認できます。

 

430~440MHzでの測定結果です。

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430~431MHz程度までではSWRが1.5を少し上回っていますがそれ以外では1.5以下です。

 

メーカーのVSWR表は以下にある通りです。

http://www.diamond-ant.co.jp/pdf/sg/sg7900.pdf

 

測定したSWRは144MHz帯ではメーカー公表のVSWR表よりいくぶん良好といえます。430MHz帯ではメーカーの表よりは若干悪い結果ですが概ね1.5以下です。

 

アンテナの設置条件でもSWRは変化しますし、測定の誤差も考慮する必要があります。また、ケーブルやコネクタで減衰がある場合、SWRは見かけ上低くなります。コネクタ、ケーブルで反射がある場合にはSWRは見かけ上高くなります。

144MHz帯は低く良好な結果となりました。430MHz帯はメーカーのVSWR表ほど下がっていませんが、1.5以下がひとつの目安とされる場合が多いのでその基準はほぼクリアしています。

 

簡易な測定での実測値としては悪くない結果であるといえます。

 

nanoVNAを使用すると簡単にSWRの測定ができました。いろいろなアンテナを比較してみたり、設置条件を変えてみたりして測定結果を比べてみるのも面白いと思います。

また、今回はVHF/UHF帯の測定でしたが、nanoVNAはHF帯の測定も可能です。HFアンテナについてもnanoVNAが利用可能です。

nanoVNAを入手したら測定の前に較正を忘れず行いましょう。

 

430MHz帯FM(F3E)はバンドプランで431.40MHz以上なのでこの測定結果からもSWRの心配なく安心して交信に使用できます。

 

最後に、測定しておいてなんですが数値は性能のひとつの側面を示している程度に捉えるべきでしょう。性能や使用感は実際に使ってみるのが一番です。

 

測定者

・第一級アマチュア無線技士

・第一級陸上無線技術士