小電力リニアレギュレータ回路の製作

ギターのエフェクターをスイッチングACアダプターで使っているとノイズがのることがありました。そこでローノイズ電源が欲しいという動機でリニアレギュレータを組むことにしました。あえて三端子レギュレータは使わずディスクリートで製作してみようというのが今回の試みです。

 

市販のユニバーサル基板に実装したいというのと入手が容易な部品を使いたいので、回路は複雑すぎずかつ必要な性能は確保するという方針で設計しました。

入力は入手が容易かつ安価で小型なスイッチングACアダプターを使用し、出力はギターのエフェクターの電源という用途を見据えて電圧は9Vとし、電流は300mAくらい出せればOKです。

 

実際に設計した回路です。

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出力9V程度のシリーズレギュレータ

入力は部品と一緒に購入した15V 0.8A出力のスイッチングACアダプターです。

18Vのアダプターなどでもほぼそのまま動作するはずです。

分圧用の抵抗に半固定抵抗を用いて出力電圧を9Vに調整します。

 

設計した回路はシリーズレギュレータ(直列制御型安定化回路)です。

出力の電圧が下がるとTr2のベース電流が減少し、Tr1のベース電流が増加して出力電流を増加させます。出力の電圧が上がると逆の動作をして電圧を安定化させます。

Tr1は電流制御用のパワートランジスタです。TTD1415Bはダーリントントランジスタで直流電流増幅率が大きく便利です。放熱器は小型のものを取り付けました。コレクタ損失は入力を15V、出力を9V 300mAとすると1.8Wとなり定格内におさまります。

C1, C2は回路の電源のバイパスコンデンサと入力の交流分に対してのコンデンサです。Tr1はエミッタフォロワを形成するので入れておくと安心です。

C3, C4がポイントで出力の交流分に対して帰還をかけるためのコンデンサです。回路はシンプルなままリプルやノイズの抑圧をなるべく大きくするために入れました。

Dzは基準電圧を得るためのツェナーダイオードです。2Vや3Vなどのものでも分圧抵抗の抵抗値次第で使えますが、ここでは6.2Vのツェナーダイオードを使用しています。定格は500mWで問題ありません。R3はツェナーダイオードに充分な電流を流すために入れてあります。今回はうまい具合に回路全体で抵抗は1.2kΩの一種類と半固定抵抗1個だけで構成できました。抵抗は1/4W抵抗で事足ります。

Tr2低周波小信号用のポピュラーなNPNトランジスタ、2SC2458です。定格上はコレクタ電流が150mA, コレクタ損失が200mWなので充分です。

コンデンサはC4などは少し無駄に大きいですが、これも回路全体で種類が少なく済むように100μFとしました。コンデンサの耐圧は100μFの電解コンデンサが35V, 0.1μFのセラミックコンデンサが50Vのものを選びました。

 

設計は机上で行い、後日、実際に製作しました。

20Ωのセメント抵抗を負荷にして450mAの電流を流したところ、電圧の変動は0.07Vの低下でした。これよりおおまかに出力インピーダンスは0.2Ω以下程度と実用上充分低いと評価できます。

肝心の実際に使ってみてのギターのエフェクターのノイズですが、9VのACアダプターを直接使っていたときに気になっていた不快なノイズは消えました。当初の目的は達成できました。

 

測定機器があれば三端子レギュレータなどとの比較とかもやってみたいですが、それはもしまた機会があれば。