NIC(Intel I219-V)の詳細設定 ~高速・安定・低レイテンシ通信のために~
NIC、ここでは特にIntel I219-Vの最適な詳細設定のためにどうすればよいか、考え方とともに設定の一例を示します。チップセットはIntel H270です。「最適」とは高速・低レイテンシ・高安定性・低CPU負荷を実現し、これらのバランスを取るという意味です。
OSはWindows 10です。
まず最初に、ドライバを最新版に更新しておきましょう。現時点での最新のドライバのバージョンは 12.19.1.37 です。
よく「ハードウェアよりCPU処理のほうが速い」といわれているのを目にします。ハードウェアを活用しましょう。実際はハードウェアは高速です。専用ハードウェアはCPU・MPUより消費電力あたりのパフォーマンスが大変高いです。せっかく高速なハードウェアを積んでいるのですから有効に利用しない手はありません。
エンタープライズ向けネットワーク機器なども転送は専用ハードウェアが行っていることが多くあります。CPUはその名の通り中央制御装置として機器全体の制御を行い、実際のデータの転送はASICなど専用ハードウェアが行っています。
ハードウェアを利用する利点はまだあります。CPU負荷を軽減できる点です。ハードウェアで処理を行わないならCPUが処理を行う必要があるので当然です。
もうひとつ、レイテンシを小さくできるという利点があります。CPUで処理すると仮にスループットは上がったとしてもレイテンシはどうしても大きくなります。NICで処理してしまったほうがレイテンシの面で有利です。
通信を考える上ではジッターを無視することはできません。ここではパケット到着の時間的なゆらぎのようなものと思ってください。ジッターは小さいほど通信品質が良いです。ジッターは音声通話やビデオ会議など高いリアルタイム性が要求されるアプリケーションで重要になります。ジッターが大きいと通話品質や映像の乱れが起きます。ソフトウェア(CPUとメモリ)でジッターの吸収をしていることが多いですが、あまりにひどいと吸収しきれませんし、そもそも小さいに越したことはありません。CPUのプロセス管理や割り込み、メモリアクセスなどの影響を受けて通信のCPU処理はジッターが大きくなりがちです。専用のハードウェアで処理したほうが有利です。
以上の点から、NIC(ハードウェア)を活用した最適設定を行います。Intel I219-Vは優秀なのでしっかり活躍させましょう。
肝心のパフォーマンスは、条件が良ければインターネット上のサーバとの実際の通信で800Mbps超を実現できました。途中のブロードバンドルータのスループットの上限がそのくらいなので、ほぼワイヤスピードをフルに引き出せます。レイテンシも小さく、LAN内のブロードバンドルータに1482バイトのpingを64回行ったところ、往復に要した時間はすべて1ms未満という結果になりました。
安定性の面でも合格です。Intel I219-Vはそもそも発熱などの問題が少なく安定しているので長時間の連続通信や高速の通信でも途絶したり不安定になることは経験していません。
それでは、以下に実際に設定した詳細設定を示します。
・PMEをオンにする:有効
・PTP ハードウェア・タイムスタンプ:無効
・RSS キューの最大数:2キュー
・RSS ロード・バランシング・プロファイル:最も近いプロセッサー
・TCP チェックサムのオフロード (IPv4):受信/送信 有効
・TCP チェックサムのオフロード (IPv6):受信/送信 有効
・UDP チェックサムのオフロード (IPv4):受信/送信 有効
・UDP チェックサムのオフロード (IPv6):受信/送信 有効
・Wake on Link 設定:無効
・Wake On Magic Packet:有効
・Wake On Pattern Match:有効
・アダプティブ インターフレーム スペーシング:有効
・ギガビット マスタースレーブ モード:自動検出
・システム無動作時の節電機能:無効
・ジャンボパケット:9014バイト
・ソフトウェア・タイムスタンプ:無効
・パケット優先度とVLAN:パケット優先度とVLAN 有効
・パワーダウン時に速度を落とす:無効
・フロー制御:受信/送信 有効
・プロトコル NS オフロード:有効
・リンク・ステート・イベントのログ:有効
・リンクを待機:自動検出
・リンク速度バッテリセーバー:無効
・レガシースイッチ互換モード:無効
・ローカル管理されるアドレス:存在しない
・割り込み加減:有効
・割り込み加減率:アダプティブ
・受信バッファー:1024
・受信側スケーリング:有効
・省電力イーサネット:無効
・送信バッファー:1024
・速度とデュプレックス:オートネゴシエーション
・大量送信オフロード V2 (IPv4):有効
・大量送信オフロード V2 (IPv6):有効
・超低消費電力モード:無効
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筆者
・第一級陸上無線技術士