水晶振動子を発振させる(正弦波発振回路)

水晶振動子はその直列共振周波数と並列共振周波数の間の非常に狭い範囲で誘導性リアクタンスとなり(Qが極めて大きい)、負荷容量と負性抵抗を接続することで安定して発振させることができます。水晶振動子は自由振動をするので正弦波を得ることができるはずです。実際に発振させて出力を取り出せる回路を製作しました。

 

負性抵抗としてはトランジスタの増幅回路を利用します。発振の振幅などは水晶振動子の特性や回路の構成や素子の特性によるので、実際のところ動かしてみるまでわからないところはあります。

 

今回は3.579545MHzの水晶振動子を使います。水晶振動子のデータシートによると負荷容量は20pFなので、20pF程度のセラミックコンデンサを並列に接続します。

 

製作した回路の回路図を示します。

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3.579MHz 水晶発振回路

動作確認はオシロスコープで行いました。実際の発振周波数はオシロスコープの周波数計によると3.57946MHzです。誤差はおよそ24ppmとなります。周波数、振幅ともに非常に安定しています。

 

回路は少し大きめのユニバーサル基板にゆったりと実装しましたがきちんと動きました。一応、高周波回路なのでコンパクトに実装するに越したことはないです。

 

安定度の点からしてもバイアス回路は電流帰還バイアス回路一択です。直列に接続されたC3とC4が負荷容量です。C3とC4の比で発振波形や発振の振幅が変化します。C3/C4が大きいほど振幅は小さくなり綺麗な正弦波となるはずなのですが(大きすぎると発振しない)、発振回路(Tr1のエミッタ)の振幅は大きく、少し歪んでいます。このあたりは水晶振動子や回路の素子の特性などに左右されるので、実際のところは動かしてみるまでわかりません。

 

使用したトランジスタ(2SC2458)は高周波用ではありませんが、この程度の周波数なら十分です。Tr2は緩衝増幅器です。Tr1から直接出力を取り出すと接続する負荷によって発振状態が影響を受けてしまいます。そのためエミッタフォロワの緩衝増幅器を設けています。出力インピーダンスを低くする効果もあります。C3/C4の大きさおよびC3とC4の合成容量を適切に設定することと、出力は緩衝増幅器を介して取り出すという配慮が大切です。

 

トランジスタに流すコレクタ電流によっても周波数特性は変化します。少々多めに流したほうが高い周波数まで良好ですが、あまり多く流しても無駄です。

 

C1, C2は電源のデカップリングコンデンサです。回路の安定動作のために必要です。電源は9Vの三端子レギュレーターで安定化したものを使用しています。

 

この回路は小電力の発振回路ですが、高い周波数で発振する(高調波も発生する)ので電源にフィルタを入れたほうが良いです。手持ちのインダクタとコンデンサで以下のような簡単なフィルタを製作して電源に挿入しました。

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LCフィルタ

0.1μFのセラミックコンデンサは周波数特性もよく、使う場面も多いので余分に用意しておくと便利です。使用した4.7μHのインダクタは最大620mAまで電流を流せるので今回の回路には十分です。加えて電源ラインに流れるコモンモード電流にも配慮するとより安心です。

 

完全に綺麗な正弦波を得るのは実は少し難しかったりしますが、水晶振動子を使うと非常に安定して発振する回路を作ることができます。